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文化財は、日本の長い歴史の中で生まれ、はぐくまれ、今日まで守り伝えられてきた貴重な国民的財産です。このため国は、文化財保護法に基づき重要なものを国宝、重要文化財、史跡、名勝、天然記念物等として指定、選定、登録し、現状変更や輸出などについて一定の制限を課す一方、保存修理や防災施設の設置、史跡等の公有化等に対し補助を行うことにより、文化財の保存を図っています。また、文化財の公開施設の整備に対し補助を行ったり、展覧会などによる文化財の鑑賞機会の拡大を図ったりするなど文化財の活用のための措置も講じています。さらに、日本を代表する文化遺産の中から顕著な普遍的価値を有するものをユネスコに推薦し、世界文化遺産への登録を推進しています。
世界遺産とは、地球の生成と人類の歴史によって生み出され、過去から現在へと引き継がれてきたかけがえのない宝物です。現在を生きる世界中の人びとが過去から引継ぎ、未来へと伝えていかなければならない人類共通の遺産です。
世界遺産は、1972年の第17回UNESCO総会で採択された世界遺産条約(正式には『世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約』:)の中で定義されています。2015年12月現在、世界遺産は1031件(文化遺産802件、自然遺産197件、複合遺産32件)、条約締約国は191カ国です。
嚴島神社は、12世紀に時の権力者である平清盛の造営によって現在みられる壮麗な社殿群の基本が形成された。この社殿群の構成は、平安時代の寝殿造の様式を取り入れた優れた建築景観をなしている。また、海上に立地し、背景の山容と一体となった景観は他に比類がなく、平清盛の卓越した発想によるものであり、彼の業績を示す平安時代の代表的な資産のひとつである。このため、価値基準(i)に該当する。
嚴島神社の社殿群は、自然を崇拝して山などを御神体として祀り、遥拝所をその麓に設置した日本における社殿建築の発展の一般的な形式のひとつである。背後に山をひかえ、前面が海に面するという、周囲の環境と一体となった建造物群の景観は、その後の日本人の美意識の一基準となった作品であり、日本に現存する社殿群の中でも唯一無二のものである。日本人の精神文化を理解する上で重要な資産となっている。そのため、価値基準(ii)に該当する。
これら建造物群のうち、13世紀に建造された本社幣殿、拝殿、祓殿、摂社客神社の本殿、幣殿、拝殿、祓殿は、各々が造営当時の様式をよく残し、日本に現存する社殿建築の中でも鎌倉時代に建築された数少ない建造物となっている。度重なる再建にもかかわらず、平安時代創建当初の建造物の面影を現在に伝える希有な例である。また、海上に展開する社殿群は、周辺の自然と一体となった環境をもち、平安時代の寝殿造の様式を山と海との境界を利用して実現させた点で個性的である。
このように、嚴島神社の社殿群は平安時代から鎌倉時代にかけての様式を現在まで継承し、自然崇拝から発展した周囲の景観と一体をなす古い形態の社殿群を知る上で重要な見本である。この点で価値基準(iv)に該当する。
嚴島神社は、日本の風土に根ざした宗教である神道の施設であり、仏教との混交と分離の歴史を示す文化資産として、日本の宗教的空間の特質を理解する上で重要な根拠となるものである。このため、価値基準(vi)に該当する。
上記の特色を備える木造建造物群は、日本だけでなく、世界的にも類例がなく、保存状態の比較は不可能であるが、しかし、個々の資産の価値を永続的に保持するために、国及び地方公共団体が「文化財保護法」に基づく手厚い保護を行っているため、木造建造物群としてきわめて良好な保存状況にあるということができる。
以下で定められた登録基準 i ~ vi の 1 つ以上を満たす場合は文化遺産に、vii ~ x の 1 つ以上を満たす場合は自然遺産に、双方の基準それぞれ 1 つ以上を満たす場合は複合遺産となる。
出典/日本国政府, 文化庁, 環境庁 1995 世界遺産一覧表記載推薦書,日本ユネスコ協会連盟, 世界遺産運動, 世界遺産とは 2016・協力/厳島神社